山の空もよう
富士山の初冠雪が観測開始以来最遅に
2024/10/28
江戸時代初期の文人、石川重之は富士山を仰ぎ見て『白扇、倒(さかしま)に懸(かか)る東海の天(さながら東海の空高くに白扇を掛けたようだ)』と詠んでいます。雪をいただく富士山は高さが際立って、日本人の芸術の源泉となってきました。その白扇が、もうすぐ10月が終わろうとしているのに黒いままです。
甲府地方気象台では、前進の山梨県立甲府測候所が1894年8月に創立されて以来、130年にわたって初冠雪の記録を取り続けています。それによると初冠雪の平年は10月2日で、これまで最も遅かったのは1955年と2016年の10月26日。今年は最晩の日付をすでに過ぎています。数十年前までは甲府以外にも観測地点があり、元祖人気お天気キャスターの倉嶋厚さんが昭和61年(1986年)に書いたエッセーには、富士山の初冠雪の平年は河口湖測候所から見た場合には9月27日、御殿場測候所では9月29日、三島測候所では10月3日とありました。いずれも初冠雪が11月までずれ込んだことはありません。
甲府地方気象台は、初冠雪が遅れている原因について平年より気温が高い日が続いていることが原因のひとつとしています。向こう1週間も上空に強い寒気が流れ込むことがない見通しで、史上初めて11月になってからの初冠雪となれば地球温暖化の段階がまたひとつ進んだことを示す指標といえそうです。