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吉田博の見た山の色彩

2021/11/08

先日、たまたま目にした広告がきっかけで『高山の美を語る』という文庫本を買いました。1931年に刊行された吉田博唯一の画文集を復刻したものです。

吉田博といえば明治から昭和にかけての風景画の第一人者として知られ、今も人気の高い画家ですが、『高山の美を語る』で語られる内容は冒険的要素に富んだ登山スタイルでかなり驚きました。あまりに偉大な画業で脚光を浴びていなければ、登山家として記憶されていたのではないかと感じるほどです。山の先輩として出てくるのは小林喜作、嘉門次などで、これも山好きの自分を興奮させました。失礼ながらこの本を読むまでは、山に詳しいことは知っていましたが、ここまで山に浸かった創作活動をしているとは想像だにしませんでした。人の意外な一面を知るとはこういうことを言うのでしょうか。

さて、『高山の美を語る』には山の天候について語られる章もあり、気象予報士として見逃せないところです。彼は画家ですから(このようにまとめるのも非常に乱暴ですが)、天気の変化に伴う空気感を色彩で感じ取っています。これは私も共感するところで、空気を多く含んだ鈍い色彩、カラりと乾いた鮮やかな色彩は確かに存在しています。空気を伝える色彩表現がいい絵の条件であると思っていますが、絵にしても、写真にしても、なかなか高度な技術が求められることは言うまでもありません。