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「天の打ち水」はいずこに・・・夏の風物詩 入道雲と夕立が懐かしい

2021/07/17

 梅雨明けしていよいよ夏空が広がる季節。四方を山々に囲まれる甲府盆地は、その上にもくもくとした入道雲が湧き上がる。天にも届く雄大さだ。入道雲は1座、2座と数えるそうだが、山々のそこここに湧き上がる盆地の入道雲は、「雲の峰」と呼ぶにふさわしい景観となる。

 雲を大入道に成長させ、地上をジリジリと照りつけた真夏の太陽が傾く頃、頭上に迫る大入道からポツポツと大粒の雨。「夕立だ!」と言う間もなくバラバラバラと、けたたましく降る雨。しかし1時間もしないうちにスッと消える。昼の暑さがしぼんで涼やかさが満ちる。運が良ければ東の空に虹も。暑さは落ち着き夜は快適に・・・。

 風情に満ちた真夏の一日だ。夕立がこない日は、庭先に打ち水をして熱を冷ます。子どものころはそんな風景が何日かあったような気がする。しかるに最近は・・・。夕立はおろか、入道雲すら耳にする機会がまったく減ったように思う。

 入道雲も夕立も、雄大積雲や積乱雲に関係する現象である。それらの雲が最近は猛々しい。降る雨の強さや量がどんどん強力になっている。降ってもたかだか1時間の夕立は、多くても雨量は20㍉といったところ。ところが最近は、時間雨量50㍉を超す雨があちこちに平気で降る。時に100㍉にもなる。1時間で済まず、数時間も降り続くこともある。ゲリラ豪雨、線状降水帯という恐ろしげな言葉が飛び交う時代。夕立は出番もない。真っ黒な積乱雲を前に、文学的な入道雲という言葉も雲散してしまう。

 雨の降り方が激しくなれば、大雨災害が多発する。全国のアメダスで観測される時間50㍉以上の雨が、30年前に比べて1.4倍に増えているという報告もある。地球温暖化が進み、海面からの水蒸気の供給が増え、大気中の水蒸気量が増加すれば、降る雨の量がますます増えるだろうことは、容易に想像がつく。災害多発を前に、情緒的なことなど言っていられない時代になっている。

 日本の夏の風物詩、入道雲と夕立の一連の風景。今の趨勢では、どんどん薄れていくばかりだ。「入道雲がわきたつ昼下がり。にわかに頭上へ迫る雲。一陣の風とともにザッとひと降り。夕立が過ぎ、東の空にはうっすらとした虹。暑さが落ち着いた庭先では、浴衣姿の妙齢のご婦人が縁台でひと休み」、なんていう景色はもう取り戻せないかもしれない。極めて個人的な妄想だが、そう思うと「温暖化はけしからん」となる。