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私たちは「ゆでガエル」になるのか・・・平年値更新に思う

2021/06/02

 自宅から道路を隔てて田んぼが3枚。先日、田植えに備えて水が張られた。途端にカエルの大合唱が始まる。どこにそんな数のカエルが隠れていたのか。いつ声合わせをしていたのか。1匹が先導して鳴くと、続いて実に見事なハーモニー。「今年もカエルどもは健在。夏の始まりだ」。我が家に季節の移り変わりを教えてくれる、ささやかな楽しみとなっている。

 雨の季節のカエルから、いきなり「ゆでガエル」の話で恐縮だが、今回更新された平年値を見ていて「ゆでガエルの法則」を思い出した。法則を簡単に紹介すると、カエルをいきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、水に入れて徐々に暖めていくと熱くなっていくことに気づかずゆで上がってしまうという例え話だ。急な変化は気づきやすいが、徐々に変化するものは気づきにくく対応が手遅れになってしまうことへの教訓として、経営コンサルなどでよく引用されている。カエルの名誉のために補足すると、実際はカエルは熱くなると逃げ出すそうなので、あくまで寓話の世界の話だ。

 気象の世界での平年値は、その気象状態が平均から比べてどのくらいズレているかを示す重要な指標となる。いわば物差し。そして、基準となる平均を割り出す期間を30年間としている。なぜ30年なのか・・・。

 手元にある「理科年表Q&A」(丸善)には、はっきりとした記録は見当たらないとした上で「異常気象の定義が・・・具体的には、過去30年の観測統計値のばらつきを基準として30年に1度発生するかどうかというような状態としていることから、過去30年の累年平均値を平年値としたと考えられます」とある。30年に1度といえば、多くの人が人生で1回か2回経験するかしないかのレベル。「いつもと違う」の「いつも」を30年間の平均状態に置いたわけだ。

 平年値は、過去30年の観測データの平均を直後の10年間で使うというサイクルで回している。気象庁の平年値は1921年~1950年の平均を1951年から10年間使ったのが「初代平年値」。1961年、1971年・・・と10年ごとに更新され、2021年の今年から、1991年~2020年の平均から割り出した数値を使っている。初代から数え「8代目」となる。

 平年値の気温はこれまでもじわじわと上昇してきたが、今回は上昇がより顕著になった。その原因は、「8代目平年値」が、気温上昇が顕著になった1990年代からのデータにすべて置き換わったことにある。「7代目」は1980年代の10年間が入っていたが、そのデータが外れ、2010年代のデータが入ったわけで、平年値はこれまでになく「温暖化」した。

 とはいえその変化は、甲府を例にとれば平均気温にして0.4℃の上昇。たかが0.4℃、されど0.4℃。物差しが「温暖化」すると、次第に「暑い」が「ふつう」になっていく。0.4℃を「たかが」と思っていると、その先は「ゆで上がり」が待っている。気温の上昇は気候変動につながり、その過程では極端な気象現象や異常気象が増えてくる。じわじわとした変化に鈍感になるとろくな事はない。我が腹回りを見ても明らかだ。