室長のひとりごと
ニューノーマル時代は心配だらけ・・・異常が通常になる怖さ
この夏(6~8月)、全国的に観測史上1位の暑さとなったが、山梨も大いに暑かった。1895年から128年の観測データがある甲府では平均気温(26.3℃)が2位、最高気温の平均(32.2℃)が4位、そして最低気温の平均(22.3℃)では1位タイの暑さだった。1933年から90年の観測データがある河口湖では平均気温(22.0℃)が1位、最高気温の平均(28.0℃)も1位、最低気温の平均(17.7℃)は2位という記録ずくめとなった。ちなみにこの期間中、甲府の猛暑日は30日、統計上の熱帯夜(日最低気温25℃以上)は15日で、既に猛暑日は5位、熱帯夜は4位タイまで記録を伸ばしている。
もっとも、平均すると暑かったわけだが、強烈な暑さはなかった。暑さの御三家である甲府、勝沼、大月の最も高い最高気温はそれぞれ38.7℃、38.8℃、38.7℃で39℃に届いていない。この夏は、空の高いところの高気圧はしっかりと日本を覆っていたが、地上付近の下層では湿った暖かい空気が入り続ける(高気圧の縁辺流や台風が持ち込んだ空気)状況となり、暑さとともに常にジメジメとしていた。「激暑」ではなく「蒸暑」の夏だった。脇道に逸れるが、このため上空を薄い雲が覆うことが多くなり、この夏は太陽の周りにハロ(暈)や幻日が出る回数が多かった(写真は、山崎剣介気象予報士撮影のハロ=8月28日)。
この暑さの異変は、日本だけでなく世界規模で、異常な高温、山火事が多発し、ついでに豪雨被害も相次いだ。山火事の多発は高温にも関係している。「地球温暖化が進んだら・・・」という文脈で語られる懸念された現象が多発したことに、国連のグテーレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代がきた」と強い言葉で警告したほどだ。異常が日常になる時代を「ニューノーマル」と表現することがあるが、この夏はまさにニューノーマルのリハーサルのような夏だったかもしれない。
「そんな時代は、我々の生活にどう影響するのだろうか」と想像力を働かせてみた。四季が美しい日本は、きっと1年の半分は夏になり、冬はそれなりに寒くなるだろうから、快適な春と秋が1カ月くらいになってしまうのかな、と情緒的な心配もだが、深刻な問題が頭をよぎった。「確か、日本の食料自給率は極端に低かったはず。戦争や紛争のみならず、地球規模の異常気象で食料生産が落ち込んだら、食料が輸入できなくなるのでは・・・」。
調べてみると、日本の食料自給率はカロリーベース(以下同)で38%。先進7カ国のG7の中で最低。先進国と呼ばれる国々の中でも最低ランク。これに飼料や種の自給率の低さが拍車を掛ける。昨今の食料品の値上げにも困っているが、「高くても買ってこれる」状況から「金を積んでも買えない」状況になったら事態は深刻だ。「世界で最初に飢えるのは日本」と警告を発する専門家もいる。ちなみに、1961年の日本の食料自給率は78%。60年ほどで半減してしまったわけで「いったい国は何をしていたのだ」と腹立たしくもなった。
農水省の食料自給率の資料を調べていたら、都道府県別食料自給率というデータもあった。令和3年(概算値)で100%を超えていたのは、北海道の217%を筆頭に、秋田200%、山形143%、青森125%、新潟111%、岩手105%の6道県のみ。山梨は18%と下から11番目の低さだった。100%を超えている北海道、東北、新潟の6道県は、この夏の異変をまともに受けているところばかり。日本の食料供給拠点は「ニューノーマル」の時代、壊滅的な打撃を受けるかもしれない。
暑かった夏が過ぎ、残暑もまだ厳しいなか、そんな事を考えていたら、背筋が寒くなってきた。「ニューノーマル」の時代は心配だらけだ。