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「猛暑御三家」今年も存在感・・・トップ10返り咲きは?

2023/07/26

 今年の県内は、7月に入るとともに猛暑に度々襲われ、梅雨明けの発表(速報では7月22日)を待っていたかのように連日の猛暑日(最高気温35℃以上の日)続きとなっている。夏の暑さで全国に名が通っている山梨だが、気象庁が毎日公表している全国観測値ランキング(全国の気温観測914地点比較)の最高気温では、今年もトップ10の常連となっている。特に7月10日は1位大月、2位勝沼。翌11日は1位勝沼、2位大月、3位甲府。両日は山梨が全国で一番暑かった場所だったことを証明している。甲府、勝沼、大月の3地点は、トップ10に頻繁に登場し、山梨の暑さを印象づける牽引役を担っている。つまり、山梨の「猛暑御三家」と言える。(写真は梅雨明け発表の日の甲府盆地の夏空=気象情報室・山崎剣介気象予報士撮影)

 御三家はそれぞれに個性がある。まず筆頭格の甲府。山梨の最高気温40.7℃をはじめ40℃超えは県内最多の4回。2004年7月21日に県内初の40℃超えを観測したのも甲府。直近の40℃超えは2018年7月23日。甲府盆地の中央に位置し、熱い空気が蓄積しやすいことや、強い日射による昇温が著しい。加えて、西寄りの風が3000㍍級の南アルプスを越えて吹き下ろすフェーン現象が加わると一気に40℃が迫ってくる。しかし、午後になり富士川沿いに駿河湾からの海風が入ってくると気温上昇が抑えられる。甲府の40℃超えは、南アルプス越えのフェーン現象による昇温が早いか、富士川を北上してくる海風(南西風)による抑制が早いか、の微妙なバランスで決まってくる。

 続くのが勝沼。こちらは2013年8月10日に40.5℃を観測。40℃の舞台にデビューした。最近は甲府を上回る高温ぶりを発揮していて、昨年(2022年)7月1日に2度目の40℃超えとなる40.2℃を観測、県内最速の40℃観測日のタイトルホルダーとなった。ちなみに、昨年は群馬県伊勢崎市が6月25日、29日と立て続けに40℃超えとなり「ついに6月に40℃になる時代になった」と大きな話題になったが、勝沼の7月1日はそれに続く早さになっている。暑くなる構造は、同じ盆地内の甲府と基本的には同じだが、南アルプスのフェーンが効く甲府に対して、南に位置する御坂山塊を吹き降りる風が、最後の一押しになっている感じだ。

 大月は、甲府や勝沼の盆地組に比べて標高が高いため、朝は盆地組より気温は低い。しかし、スタートのハンディをものともせず、お昼頃にかけての急上昇ぶりはこの両者を凌駕していて、県内の猛暑日の先陣を切ることが多い。山間部にあり、南西風が吹くとフェーン現象的に気温が上がりやすく、関東方面の暑い空気の影響も受けやすい。しかし強い日射による昇温は盆地組に比べると弱く、午後になると盆地組に巻き返されることが多い。全国ランキングに盆地組が登場するまで、そこに山梨の名をアピールする貴重な存在になっている。7月10、11日のように、時にトップ10にそのまま残ることもある。最高気温1位は39.9℃で40℃にわずかに届いていないが、40℃の舞台デビューは時間の問題だ。

 ところで、最高気温の高い方からの全国歴代記録では現在、甲府が11位、勝沼が14位とトップ10から外れている。以前は甲府が5位以内、勝沼も10位以内という時代もあったが、最近の各地の高温ぶりに順位を落としている。新興勢力に老舗が苦戦しているといったところか。返り咲きを期待したい願望と、「暑さを競ってどうするんだ。この不届き者」という思いが交錯する複雑な気持ちだ。しかし、温暖化を背景にベースが暑くなっている昨今。40℃が当たり前の夏になったら、そんな細かなランキング争いどころではなくなる。素朴に、暑さランキングを楽しめる時代ももうわずか、かもしれない。