室長のひとりごと
暑くなる3月・・・温暖化の影響が色濃い月
今年も3月が「暑い」。例えば季節の移ろいを告げるサクラの開花や満開の発表。早い記録の1、2位を更新する便りが全国から届き始めている。甲府の標本木である、甲府地方気象台のソメイヨシノも3月17日に開花、24日に満開の発表があった。開花は最速タイ、満開は2位の早さだった。今年デビューの4代目標本木が、春の早まりをしっかりと伝えている(写真は満開となった4代目標本木。堂々とした枝振りでの見事な見栄え)。
3月の平均気温も高い。甲府の24日までの日平均気温の月平均は11.7℃。1895年から昨年までの128年間(1920年に統計中断あり)の3月の同気温の最も高い記録は2021年の11.5℃。まだ確定したわけではないが、31日までの高めの気温予想を考慮すると、1位更新は間違いなさそうだ。3月が年々暑くなっている。
「他の月はどんなだろうか?」と思い、甲府の1月から12月のすべての月の、この100年の変化(1923年~2022年)を探ってみた。そしたら何と、3月の上昇率が最も高かった。上昇の原因が温暖化とすれば、3月が温暖化の影響を最も受けている月となる。せっかく計算したので100年での気温の上がり方を高い順に並べてみる。①3月:3.33℃ ②2月:3.26℃ ③5月:2.97℃ ④10月:2.88℃ ⑤4月:2.52℃ ⑥1月と11月:2.44℃ ⑧9月:2.37℃ ⑨8月と12月:2.13℃ ⑪6月:2.07℃ ⑫7月:1.15℃-。
このデータを眺めて気がついたことがもう一つ。春と秋の上昇が大きく、夏と冬の上昇が控えめで、特に夏は6月、7月、8月が下位3位に並ぶなど、上がり方が鈍いことだった。ちょっと踏み込んだ物言いをすれば、春と秋が夏に近づき、冬が夏化にやや抵抗しているとも見える。
最近は甲府でも、3月に夏日(日最高気温25℃以上)、4月に真夏日(同30℃以上)、5月に猛暑日(同35℃以上)を観測する時代になってきた。昨年は山梨ではないが6月に40℃超えを観測した(6月25日、群馬県伊勢崎40.2℃)。もっともこの年、勝沼で7月1日に40.2℃を観測しているので6月組と大差はない。3年前の2020年には9月に新潟で40℃超えを観測している(9月3日、新潟県三条で40.4℃、同胎内市中条で40.0℃)。
この話を同僚の若手予報士に話したら、彼がこうつぶやいた。「これからは、3月夏日、4月真夏日、5月猛暑日の時代。そして6、7、8、9月は40℃の時代。40℃超えを酷暑日とでも命名してはどうですか」。近いうちに、暑さの呼び名がまた増えるかもしれない。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が最新の報告書を20日に発表した。産業革命前からの気温上昇を1.5℃以下に抑えることを目指す(パリ協定)としていたが、1.5℃を超える恐れが強まり、対策を強化しないと今世紀末には最大3.4℃上昇すると警告している。
早々に満開となったサクラを見ながら「一人ひとりは善人、でも集団になると狂気。懲りない人類はついに自らを窮地に追い込む運命か・・・」と、つい思ってしまった。