室長のひとりごと

HOME > 室長のひとりごと > 「甲州桜組」に4代目登場・・・甲府地方気象台のサクラ標本木が交替

「甲州桜組」に4代目登場・・・甲府地方気象台のサクラ標本木が交替

2023/02/20

 立春(2月4日)が過ぎ、雨水(2月19日)、啓蟄(3月6日)をへて春分(3月21日)へ。「光の春」から「気温の春」へと進むこの時期は、野山も春色に衣替えを進める。自然界の衣替えは美しい。生活に潤いを与えてくれる。

 春色への衣替えの主役と言えるのがサクラだろう。開花を待ち焦がれ、花見の宴を楽しみ、散りゆく姿に人生のはかなささえ感じ取る。世界中で、日本人くらいサクラの花をこよなく愛する民族はいないかもしれない。

 そんなサクラには、大事な役割がもう一つある。開花や満開の日が全国的に調べられ、季節現象の大事な記録となっている。これは、気象庁が正式な気象統計項目として行っている生物季節観測の一環。気象を測器で直接観測する物理的なデータとは別に、生物の動向を目視観測で追いかけ、季節の遅れ進みや気候の違い、変化を追いかけている。現在6種目9現象を対象としているが、サクラの開花と満開はその中の含まれている。

 山梨のサクラの観測は、甲府市飯田4丁目の甲府地方気象台の敷地内にあるソメイヨシノで行われている。観測対象はその中の1本で、標本木と呼ばれる。この木に5輪から6輪以上の花が咲くと「開花の発表」となる。開花の発表は全国の気象台で行われ、同じ開花日を結んだサクラ前線(正式名称は等期日線)が、次第に北上していく。

 つまり、山梨でサクラが開花したとの全国認定は、この標本木で決まるわけで、このサクラはまさに山梨のサクラの代表。ちょっと斜に構えて言えば「甲州桜組」の親分となる。この親分が今年、代替わりとなった。ある意味、大事件である。

 甲府地方気象台によると、昨年まで観測していたソメイヨシノに変調が出始めたため、樹木医に診断してもらったところ、がんしゅ病(サクラこぶ病)などの病状が判明し、一部の枝のみならず樹木全体に影響する恐れが分かったという。このため交替となったが、新標本木は、副標本木として比較観測してきたため統計は継続されるという。

 新標本木は4代目(写真)。3代目は2010年12月に就任し、2011年から観測が始まったので、今回の「代替わり」は12年ぶりとなる。同気象台によると、4代目は2010年2月に樹齢4年の時に植樹され、現在およそ樹齢17年という。枝振りも良く堂々としている。ソメイヨシノの寿命は一般的に60~70年といわれているので、人間でいえば20代半ばか。元気さ満タンの4代目といえる。

 サクラの開花は、季節の移ろいを可視化してくれる。温暖化や極端化が目立つ最近の気象環境。4代目が教えてくれる開花、満開情報は、今後さらに重要になってくる。「新親分、よろしく。季節に異変が生じたらしっかり教えて」と、ひと声かけたくなる。