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ぼんやりと空を眺める・・・ぜいたくな時間に浸る

2022/10/10

 ここのところ余裕がなく、ぼんやりと空を眺める時間を持てなかった。一人ぼんやりと空を眺める。凝り固まった頭が次第に柔らかくなり、気持ちが軽くなる。心のエネルギーが回復してくる。温泉にでも浸かっていれば、その効能はさらに増す。

 一般的には評判が良くない「ぼんやり」だが、元新聞記者でコラムニストの辰濃和男さんは著書「ぼんやりの時間」(岩波新書)で、実は大切な時間であり、その効能が大きいことを多彩に紹介している。ぼんやり好きには、誠に心強い応援団的な一冊といえる。辰濃さん風に言うと、ぼんやりの時間を持つことと、空を眺めることはすこぶる相性が良い。

 八ヶ岳のすそ野に広がる野辺山高原に、獅子岩という名所がある。むき出しの溶岩の形が獅子にも見えることから獅子岩と呼ばれるのだが、ある時、周りに誰もいないことをいいことに、溶岩の上にごろりと仰向けになって、真上に広がる真っ青な空をぼんやりと眺めていたことがある。時空に体が馴染んでくると、青空の先の宇宙にも思いが飛んでいく。近くに国立天文台野辺山宇宙電波観測所があり、そこの電波望遠鏡が深宇宙を探っているが、こちらも自分が宇宙につながっているという一体感を感じてくる。何ともぜいたくな時間だった。

 ちなみに、ここには駐車場もあり目の前に広がる八ヶ岳が美しい。飯盛山登山の入り口であり、日本海と太平洋の分水嶺という看板もある。ここに降った雨は、着地点の右と左でその「人生」は大きく変わるわけだ。

 雲一つない真っ青な空には目が洗われる。サーッと掃いたような巻雲が軽やかに浮かぶ空も良い。綿のような積雲がポッカリと浮かんでいる青空も悪くない。いわし雲、うろこ雲も楽しい。山に囲まれる山梨では波状雲やつるし雲も見られるし、山沿いに湧く雄大な積雲が並ぶ雲の峰もまぶしい。飛行機雲も多く、その変化していく様は見ていて飽きない。曇り空はうね雲、雨を予感させる乱層雲の下にはちぎれ雲。雲に、これほどさまざまな名前がある国は、他にあるのだろうか。

 山梨では10月も半ばを過ぎると晴れる割合が日増しに増えてくる。11月ともなれば、晴れの割合が70%を超す日々が続く。年末から年明けにかけて晴れる割合はピークを迎える。まさにこれからが、空を眺める絶好のシーズンに入る。気温も考えれば晩秋から初冬がベストか。幸いなことに空気も澄んでくる。ぼんやりと空を眺めるには申し分がない。どこに居ても空は頭上にある。忙しい日々の合間に「ぼんやりの時間」。悪くないですよ。