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俳句に読まれた山梨の風土・・・「どう伝えるか、勉強になりました」

2021/04/02

 山梨県立文学館で「文学に描かれた天災」という企画展示(4月4日まで1階閲覧室)が行われていることを知り、先日ぶらりと足を運んだ。東日本大震災10年にちなむ「3.11文学館からのメッセージ」という全国文学館協会共同展示の一環という。山梨を襲った明治40年の大洪水で、大きな柿の木につかまり多くの人が助かったことを題材にした井伏鱒二の「中島の柿の木」(禁礼、竹村書房)など、県内、国内の歴史に残る水害、噴火、地震や感染症が描かれた小説や随筆などが多く展示してあり面白かった。

 当日は雨。マスクをして足下を濡らしての外出だった。この企画展に続き、2階で行われていた特設展「飯田龍太展 生誕100年」(3月21日で終了)も覗いたことが、雨の外出の思わぬご褒美となった。恥ずかしながら俳句の世界とは縁遠く過ごしてきた身。たいした予備知識も無く作品に接したのだが、目を開かされた。わずか十七音の言葉から山梨の風土が生き生きと浮かんでくる作品の数々。無駄のない平易な言葉で染み込んでくる。

 研ぎ澄まされた言葉の迫力に足を止める。「一月の川一月の谷の中」。真剣を突きつけられたかのような凄みのあるこの句も頭から離れないが、気象人として、この日印象に残ったのはこの三句。

  水澄みずすみて 四方よもせきある 甲斐かいくに

  やま起伏きふくして みだれなき 大暑たいしょかな

  るものは りまた ちて あきそら

 地域の気候は、地域の地形に大きく影響を受ける。山梨の気候を語るなら、県境を囲む山々がポイントになる。西の南アルプスから八ヶ岳、奥秩父、奥多摩、大菩薩、丹沢、そして富士山。「天気は西から」となれば、3000㍍級の南アルプスは、風や雲にとってまさに屏風のような“障害物”。富士山とともに山梨の天気を支配するのが南アルプスだ。風下の甲府盆地は風が乾き、空気は澄む。山々に降った雨は山体に濾されて澄んだ水をもたらす。山梨の気候を特徴付ける地形を普通に語れば、こうした長々とした説明になる。しかし「水澄みて四方に関ある甲斐の国」。このわずか十七音で、それが十分に伝わってくる。

 「山起伏して乱れなき大暑かな」。ジリジリとした猛暑に耐える山々や盆地とその底にいる我々。暑さが十分に伝わってくる。「去るものは去りまた充ちて秋の空」。去るものは自由に思い浮かべることができるが、雲を思えば、巻積雲が流れゆく真っ青な盆地の空が目に浮かんでくる。くどくどと説明しないで、考え抜かれた言葉で簡潔に伝える。俳句に学ぶところは大きい。ん!…、ここまで長い「ひとりごと」を書いたことを、まず反省しなければならないか。