室長のひとりごと
かつては「台風の砦」今は「学びの砦」・・・富士山レーダードーム館リニューアル
富士吉田市にある道の駅富士吉田に隣接する、富士山レーダードーム館がこの4月リニューアルオープンした。富士山頂にあった富士山レーダーが1999年に役割を終え、レーダードームごと現地に移設されオープンしたのが2004年。18年を経てのフルリニューアルで、展示内容が一新した。休みを利用して立ち寄ってみた(写真は、レーダードーム全景=晴れるとこの先に富士山が見える=、リニューアルした展示、最上階にはレーダーが回っている)。
富士山頂での気象観測の歴史、気象レーダーの設置から業務終了までの経過、富士山の気象などが丁寧に展示され、夏と冬の山頂気温体験ができたり、富士山レーダーの実物が最上階で回っているのも見られる。山頂にあった時のレーダードームのジオラマもある。展示は、気象災害、噴火や地震防災にも及んでいる。
天気予報の仕組みや台風や大雨の仕組みを紹介したり、高層天気図や四季の天気図といったやや専門的な解説にもスペースを割いていたのはちょっと驚いた。「富士山を入り口に、気象の面白さ、怖さ、天気予報の仕組みなど、天気に興味を持ってもらえるきっかけになりそう」とゆっくり見て回り、気がついたら入館から1時間超え。連れ合いをだいぶ待たせてしまったのは反省だった。
1964年に完成し、65年から運用が始まった富士山レーダーは、はるか南の海上から日本に迫ってくる台風を捕らえ、進路や勢力の予想に威力を発揮、「台風の砦」と言われた。1966年に山梨を直撃し、足和田災害と呼ばれる大災害となった台風26号は富士山のすぐ北側を通過。レーダーは台風の猛烈な暴風雨に耐え、その足跡をしっかり追った。この時山頂測候所で観測された最大瞬間風速91.0m/sは現在も国内1位記録を続けている。
もう20年以上前になるが、吉田口登山道から富士山頂に登ると、ちょうど火口の反対側のひときわ高いピーク・剣が峰に張り付くようにレーダードームが見える。白く輝くその姿は、いつも印象的だった。お鉢(火口)を回り3776㍍の剣が峰を目指す、最後のひと頑張りに力を与えてくれる存在だった。「それにしてもピークのすぐ横に、よくこんな施設を造ったものだ」と感動すらしたことを覚えている。
気象衛星ひまわりが登場した1977年以降も貴重なデータを送り続けたが、ひまわりのデータ蓄積や性能の飛躍的向上、地上気象レーダーの拡充などから、1999年に35年間の観測業務が終了した。そして御殿場市との移設先の綱引きを経て、2004年から現在地で「余生」を送っている。
世界に誇るべき挑戦であり、高い技術力が認められた富士山レーダー。日本一高いところで仕事をしていた時は、貴重な観測データを地上に送り続けたが、だれでも気軽に近づくことはできなかった。地上に降りた今、貴重な観測データを送ることはないが、誰でも気軽に訪れることはでき、今度は「学びの砦」になっている。